動脈硬化性疾患|芦屋市の内科 あしやサニークリニック内科

動脈硬化症とは、血管が硬く狭くなり、脳卒中・心筋梗塞・閉塞性動脈硬化症などを引き起こす疾患です。高血圧・脂質異常症・糖尿病が主な原因で、喫煙・運動不足・食生活もリスクを高めます。動脈硬化は自覚症状なく進行するため、早期対策が重要です。地中海式食事・有酸素運動・禁煙が予防に効果的で、健康診断でのLDLコレステロール・血圧・頸動脈エコーによるリスク評価も推奨されます。
  • 2025/03/09更新

動脈硬化症とは

  • 動脈硬化症とは、血管が硬くなったり、もろくなったりして血流が悪化する病気です
  • 進行すると血栓ができやすくなり、脳卒中や心筋梗塞などの重大な病気(動脈硬化性疾患)につながります
  • 高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病が、動脈硬化を引き起こす主な原因です
  • これらの生活習慣病を適切に管理することで、動脈硬化の進行を防ぎ、将来的なリスクを軽減できます

動脈硬化症の進行段階

  • 動脈硬化症は、動脈壁が変性・変形する病気で、血流の低下や血管が破れるなどの原因になります。
    自覚症状がないまま着々と進行し急激に重篤な合併症を発症するため、「サイレントキラー」とも呼ばれています。

①正常な血管

動脈硬化症の進行1
  • 血管の内側(内皮細胞)は滑らかで、血流がスムーズに流れている

    健康な状態。特にリスクなし

②初期段階(脂質蓄積期)

動脈硬化症の進行2
  • 動脈の内膜が傷つき、LDLコレステロールが沈着し始める。
    高血圧による持続的な圧力で血管がダメージを受け、糖尿病では血糖値の慢性的な上昇が血管の炎症を引き起こす。この結果、内皮細胞が傷つき、LDLコレステロールの沈着が進行する

    この段階では自覚症状はなく、健康診断で「LDLコレステロールが高い」や「血糖値が高い」と指摘されることがある。

③中期段階(狭窄期)

動脈硬化症の進行3
  • プラークが厚くなり、血管内腔が狭くなると血流の制限が始まる。
    高血圧による持続的な圧力や糖尿病による血管の糖化が血管の硬化を促進する。

    血流が低下し、狭心症や一過性脳虚血発作(TIA)などの軽い発作が起こることがある。腎臓では腎硬化症のリスクが高まる。

④ 末期段階(血栓形成期)

動脈硬化症の進行4
  • プラークが破裂し、血栓(血の塊)が形成される。血管の閉塞リスクが急激に高まる。

    脳卒中・心筋梗塞・大動脈解離など、命に関わる病気が発症
  • この進行を防ぐには原因となる生活習慣病(高血圧・脂質異常症・糖尿病)の適切な求められます。

動脈硬化症による疾患リスク|部位ごとの動脈硬化性疾患

  • 動脈硬化症が進行すると、影響を受ける部位ごとに異なる疾患を引き起こします。

脳の動脈硬化性疾患

  • 脳は全身の司令塔であり、ここで血流が低下したり出血が起こると、深刻な影響を及ぼす可能性があります。

脳梗塞

  • 血栓が血流を遮断し、脳組織が壊死し、不可逆的な障害を引き起こします
  • その結果、片麻痺・言語障害・意識障害などの後遺症を残すことがあります
  • 発症1ヶ月以内の死亡率は10〜20%とされています

脳出血

  • 脳内の血管が破れて出血し、脳組織の破壊や血流低下を招きます
  • 出血による直接的な組織損傷に加え、脳圧の上昇や周囲の虚血を伴うことで、脳梗塞よりも重篤な経過をたどることがあります
  • 発症1ヶ月内の死亡率は30〜50%とされています

脳動脈瘤・くも膜下出血

  • 血管壁の一部が膨らんでできた動脈瘤が破裂し、くも膜下出血を引き起こします
  • くも膜下出血は脳細胞の破壊だけでなく、脳圧の上昇により脳幹を含む重要部位に影響を及ぼすことがあります
  • 発症1ヶ月以内の死亡率は約40%とされています
  • 甲状腺機能亢進症
  • 褐色細胞腫
  • クッシング症候群
  • 原発性アルドステロン症
  • 腎血管性高血圧
  • 睡眠時無呼吸症候群

心臓の動脈硬化性疾患

  • 体を構成するすべての内臓・組織は、安定した血液供給を必要とします。
    その供給源である心臓が損傷を受けると、生命に関わる重大な事態を招くことがあります。

心筋梗塞

  • 血栓が血流を遮断し、心臓の細胞が壊死に至ります
  • 壊死が広範に及ぶと突然死のリスクが高くなります
  • 急性心筋梗塞の死亡率は約30%とされています

狭心症

  • 動脈硬化の進行・血栓形成、動脈自身の収縮などで血流が低下して起きるものです
  • 心臓の細胞は壊死には至りませんが、心筋梗塞のリスクが高いため、適切な治療が不可欠です

大動脈の動脈硬化性疾患

  • 大動脈の動脈硬化が進行すると、血管壁の構造が弱くなり、重大な合併症を引き起こすことがあります。

大動脈瘤

  • 大動脈の一部が異常に膨らんだ状態を大動脈瘤といいます。
  • 破裂すると大量出血を引き起こし、死亡リスクが非常に高い危険な合併症です。

急性大動脈解離

  • 大動脈の血管壁を構成する3層構造が剥がれる病態です
  • 剥離が大動脈から脳や心臓に分かれる動脈の血流障害をきたすと、、脳梗塞・心筋梗塞などの重篤な合併症に至ります
  • 本症も大動脈破裂に至ることもあります

その他の重要な動脈硬化性疾患

  • 直接的に生命を脅かすものではありませんが、症状や治療によってQOLが損なわれることがあります。

慢性腎臓病(CKD)

  • 腎臓は細小血管が密集する臓器のため、動脈硬化の影響を受けやすい臓器です
  • 高血圧による腎硬化症、糖尿病による糖尿病性腎症が主な原因として知られています
  • 進行すると人工透析が必要となり、通院負担が大きくQOLの低下を招きます

下肢閉塞性動脈硬化症

  • 脚(下肢)の動脈内腔が狭くなり、血流が低下し、虚血が進行する病態です
  • 進行すると、下肢の冷えや痛みが悪化し、歩行障害を引き起こします

動脈硬化症のリスクファクター|高血圧・脂質異常症・糖尿病と生活習慣の影響

  • 動脈硬化症を悪化させる要因には、加齢や遺伝などの避けられない要因、食生活や運動不足といった生活習慣の影響、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの基礎疾患があります。

基礎疾患に関するリスク

  • 脂質異常症
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 肥満症

生活習慣に関するリスク

  • 食生活
  • 運動不足
  • 喫煙と過度な飲酒

遺伝的・加齢リスク

  • 加齢
  • 遺伝的要因
  • 疾患は主に生活習慣病ですのでこれらは喫煙と併せて是正可能なリスクファクターといえます。
    一方加齢や遺伝的要因といった是正不可能なリスクファクターもあります。

基礎疾患に関するリスク

  • 脂質異常症:LDLコレステロール・中性脂肪が高いと血管壁に蓄積しやすく、プラーク形成を促進
  • 高血圧:血圧の上昇が血管の負担を増大させ、動脈硬化を進行させる
  • 糖尿病:高血糖が血管内皮を損傷し、動脈硬化のリスクを高める
  • 肥満症:体重が増加すると動脈硬化を助長し、心血管リスクを高める

生活習慣に関するリスク

  • 食生活:高脂肪・高塩分・低繊維の食事が血管の炎症を促進
  • 運動不足:血流の低下と肥満のリスク増加が動脈硬化の原因に
  • 喫煙:血管内皮を障害し、血流を悪化させる
  • 過度な飲酒:血圧上昇・脂質異常の原因となる

遺伝的・加齢リスク

  • 加齢:生活習慣病がなくても、誰しも年齢を重ねると動脈硬化が進行
  • 遺伝的要因:家族歴があると動脈硬化の発症リスクが高まる

動脈硬化症の予防|食事・運動・治療による発症リスク低減

  • 動脈硬化症の進行を抑え、合併症のリスクを低減するためには、生活習慣の改善・医学的な治療・定期的な健康チェックが重要です。
    特に食事・運動・禁煙・適切な治療を継続することで、動脈硬化の進行を遅らせることができます。

生活習慣の改善

  • 食事療法
  • 運動療法
  • 禁煙とアルコール管理

医学的な治療

  • 薬物療法
  • 健康診断と早期発見の重要性

予防のポイント

  • 自分のリスクを把握する
  • 予防の継続が重要

生活習慣の改善

  • 食事療法:飽和脂肪酸・トランス脂肪酸を控え、DHA・EPA・食物繊維を積極的に摂取
  • 運動療法:有酸素運動(ウォーキング・ジョギング)と筋力トレーニングを組み合わせる
  • 禁煙とアルコール管理:喫煙は動脈硬化を進行させるため完全禁煙を推奨。飲酒は適量を守る

医学的な治療

  • 薬物療法:高血圧・脂質異常症・糖尿病の治療目標を達成し、動脈硬化の進行を抑制
  • 健康診断と早期発見:LDLコレステロール・HbA1c・血圧の定期チェックとリスク評価

予防のポイント

  • 自分のリスクを把握する:家族歴・生活習慣を見直し、リスク因子を減らす
  • 予防の継続が重要:小さな習慣の積み重ねが動脈硬化の進行を遅らせるカギ

FAQ(よくある質問)

動脈硬化症の進行は止められますか?

  • 動脈硬化症は完全に元に戻すことはできませんが、適切な食事・運動・薬物療法によって進行を抑えることが可能です。特にLDLコレステロールを下げることが動脈硬化の進行を遅らせる重要なポイントです。

動脈硬化を防ぐのに最も効果的な食事は何ですか?

  • 地中海式食事(オリーブオイル・魚・野菜・ナッツ)やDASH食(低塩・野菜・果物・低脂肪乳製品)は、動脈硬化の予防に有効です。飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を控え、魚の油(DHA・EPA)を多く摂ることが推奨されます。

動脈硬化の予防にはどのくらい運動すればよいですか?

  • 週150分以上の中等度の有酸素運動(ウォーキング・ジョギング)が推奨されています。さらに、週2回程度の筋力トレーニングを組み合わせると、血流改善や脂質管理にも効果的です。

喫煙は動脈硬化にどのくらい影響を与えますか?

  • 喫煙は動脈硬化の最大のリスク因子の1つです。タバコに含まれる有害物質が血管内皮を傷つけ、LDLコレステロールの酸化を促進し、動脈硬化を急速に進行させます。完全禁煙が最も効果的な対策です。

お酒は動脈硬化に良くないですか?

  • 適量の飲酒(1日あたり日本酒1合、ワインならグラス1杯程度)は動脈硬化に大きな影響を与えません。しかし、過度な飲酒は高血圧や脂質異常症のリスクを高め、動脈硬化を進行させるため、節度を守ることが大切です。

健康診断で動脈硬化のリスクを調べることはできますか?

  • 血液検査(LDLコレステロール・中性脂肪・HbA1c)や血圧測定は基本的なリスク評価に有効です。さらに、頸動脈エコー検査・ABI(足関節上腕血圧比)・CAVI(血管年齢検査)などの検査で動脈硬化の進行度を詳しく調べることができます。

動脈硬化症は何歳から注意すべきですか?

  • 40代から動脈硬化のリスクが高まり、50~60代で脳卒中や心筋梗塞を発症する人が増えます。 しかし、30代でも高血圧・脂質異常症・糖尿病がある人は早めの対策が必要です。

動脈硬化が進んでいるかどうか、自分でわかりますか?

  • 動脈硬化は自覚症状がほとんどなく、気づいたときには脳卒中や心筋梗塞などの重大な疾患を発症していることが多いです。健康診断や動脈硬化の専門検査を受けることが早期発見のカギになります。